
長年、発毛・育毛剤の開発にたずさわってきた1人として、頭髪の異常に悩む人たちの最近の急増ぶりにはただただ驚くばかりである。なかには、10代の後半から抜け毛や薄毛に気づく高校生をはじめ、男性専門と思われてきた薄毛や細毛の悩みが、女性の間でも急速に増えている。
中高年の男性の専売特許とみなされてきた脱毛や薄毛の悩みは、若者層や女性にも確実に拡大しており、頭髪不安症候群ともいえる潜在患者は、性別や年齢を問わず、急増中といった状況なのである。
「近ごろ髪が薄くなった」「髪が細く、コシがない」「以前は髪が豊富でボリュームがあったのに、最近は……」といった声がたびたび聞かれるのだ。
従来は女性ホルモンによって守られてきた女性までが、薄毛や細毛、脱毛で悩むというのも、ストレスや不眠、ダイエットなど、変化の激しい生活環境にさらされているという今日の世相を反映していると思われる。
いずれにしても、抜け毛や薄毛や気になりだしたら、嘆いていてもはじまらない。手をこまねいていては確実に進行していくのが若ハゲの特徴であるかるから、それを防止する対処法を考えなければならなくなる。そこで発毛・育毛剤の登場となるのだが、その発毛・育毛剤も以前とはかなり変わってきた。
私自身、その臨床治験などで深くかかわってきたミノキシジルを配合した新発毛剤「リアップ」や、丁子から発見されたオイゲニルグルコシドを配合した「紫電改Z」などに象徴されるように、新しい研究成果を活かして、かつての血行促進一辺倒から、毛母細胞の活性化や男性ホルモンの抑制など多角的なアプローチを各機関が競っているのだ。それだけに商品数も多くなっている。あなたが、「自分に合った発毛・育毛剤はどれだろうか?」と悩めるのは当然のことと思われる。
一般に男性型脱毛は保険医療が適用されず、自分で治療するセルフメディケーション(自己治療)の領域であり、身近な薬局・薬店で求めた発毛・育毛剤に利用してもある程度は治療できる。そのため、通院による時間的、精神的な負担が少ないというメリットがある反面、自分自身の責任で若ハゲ対策を講じなければならない。だからこそ、港に流布している俗説に惑わされることなく、毛髪についての正しい知識を身につけておくこと。そのうえで自分の症状や体質を調べ、そのタイプに合った、発毛・育毛剤を選ぶべきなのである。そのために本書を著したのであるから……。
なお、こうした薄毛や脱毛に対する関心の高まりに応えて、この1年間に限っても全国・世界レベルの毛髪学研究会が相次いで開催されている。2000年11月には徳島で「第8回毛髪学研究会」、翌2001年6月には東京で「第3回大陸間毛髪研究会」、同年11月にも東京で「日本香粧品科学会第26回教育セミナー・21世紀を迎えてのアンチエイジング――髪を美しく保つために――」などが開催され、注目すべき研究成果も数多く披露された。
なかでも大陸間研究会は、欧州、米国、日本、オーストラリアから約350名の毛髪研究者が参集して開催されたもので、173題の研究演題について熱心に質疑応答が交わされた。毛髪研究のカギを握る男性ホルモン受容体に関する発表や、飲む育毛剤として注目を集めているプロペシア(成分名フィナステリド)に関する発表は、この分野の研究が新しい段階に入ったことを物語るものであった。また、最新のニュースとして、日本の大手電線メーカーである住友電工が、毛髪をつくり出す細胞組織を再生する物質の開発に成功し、2010年をめどに商品化をめざすとの新聞報道もあった。いずれにせよ、年々、毛髪の分野での研究レベルは確実に高くなっており、今後、私たちもこれからの分野での研究を推進するにあたり、いくつかの機関との共同研究の体制を整えることが必要となろう。
ともあれ、若ハゲ対策のためのセルフメディケーションに必要な知識を網羅した。類書に共通する毛の構造、発生と発育などの知識は必要最小限にとどめ、すぐに役立つと思われる薄毛対策を前面に打ち出してみた。
また、最新の毛髪研究の内容をわかりやすく紹介すると同時に、読者がいちばん求めているであろう、発毛・育毛剤の選び方を重点的に記述した。数多いヘアケア製品の交通整理が少しでもなされ、頭髪に悩む人々を癒してくれれば幸いである。最新の研究では、1つの遺伝子によって脱毛が引き起こされる可能性は低く、複雑な細胞間の相互作用で一連の脱毛が引き起こされていると考えられる。したがって、1つの因子の改善のみでは、脱毛予防を期待できない人もいるのである。その場合は、次のステップとして、専門知識をもった医師に相談することも必要になろう。新しい薬剤、遺伝子治療、心療内科的なアプローチによって、若ハゲは予防できるはずだ。そうした頭髪専門クリニックの設備も進められており、今後ひとつの選択肢になると思われる
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